聞き手:桃山学院大学社会学部准教授 平野孝典
桃山学院大学では、1994年度から「社会調査実習」を開講しており、毎年、受講生の問題関心に応じた調査を実施して報告書を刊行しています。
本学の社会調査士プログラムには、卒業要件(必修)に含まれる資格科目があるため、無理なく履修を進めることができます。毎年、専任教員による資格説明会も実施しています。
さらに、資格取得を目指す学生の学習拠点として「社会調査実習室」を整備し、職員が本申請やキャンディデイト申請等の事務手続きをサポートする体制も整っています。直近の2025年度は、30名が社会調査実習の単位を修得し、全員が資格取得に向けて学びを進めています。
本学のプログラムの特徴は、2年次秋学期の「データ解析実習」から3年次春学期の「社会調査実習」まで続く、全60回におよぶ濃密な実習にあるといえます。同じ教員・受講生で1年間、1限・2限連続の授業を継続するなかで、量的社会調査の全プロセスを経験し、確かな実践力を養います。
今回は2025年度春学期にこの実習を終えた、木田隼翔さんと寅本心華さん(いずれも3年次生)に、資格取得のきっかけから学びの実感までを率直に語ってもらいました。
当日の座談会の様子
寅本
私は正直、最初から絶対取るぞという強い気持ちがあったわけではありませんでした。ただ、せっかく大学の授業を受けて単位を取るなら、その延長で資格も取れるのなら、やってみようかなという軽い気持ちが入り口でした。大きかったのは、1回生の時にあった社会調査士資格の説明会です。そこで担当の先生がすごく分かりやすく説明してくださって。私は数学が大の苦手で不安もあったのですが、先生の話を聞いて、これなら私でも挑戦できるかもと思えたのが決め手になりました。
木田
僕は入学前から資格を取るつもりでした。大学受験のときに社会学部のWebサイトを見て、この学部ならではの資格として社会調査士があることを知っていました。他の資格は他学部でも取れますが、これは社会学部に来たからこそ取れる資格だと思ったので、取ろうと決めていました。あと、募集が始まったときに、大学からのお知らせやガイダンスがあったおかげで、履修登録までスムーズに進められたのは助かりました。
学生が資格取得を目指す背景には、説明会の実施やカリキュラムへの組み込みといった大学側の環境づくりが大きく影響しているようです。また、大学HPでの情報発信が受験生に届いていることも見逃せません。大学側のアプローチと学生の自発性の双方が、資格取得の第一歩となっています。
平野
2年次の秋学期から3年次の春学期まで続くデータ解析実習と社会調査実習は、合計すると60回という充実した授業回数になります。これはゼミ活動と同じくらいのボリュームなんですが、実際にやってみてどうでしたか?
木田
いやぁ、慣れるまでは本当に大変でした。毎回課題があって、それを提出して、先生にチェックしてもらって、また書き直して……という繰り返しで。でも、そのおかげで迷子にならずに進めました。特に僕が担当した分析は「3重クロス表」(3つの変数を扱ったクロス表)という複雑なものだったんですが、先生に何度も質問して助けてもらいました。あれを一人でやれと言われたら難しかったと思いますね。
寅本
座学の授業、特に統計の授業はインプットが多くて大変でした。その後の実習はグループワークが多くクラスメイトといろいろと議論ができて楽しかったですね。自分でつくった仮説も概ね支持されて、考察もしっかり書けたと思っていますが、もう少し文献をたくさん読めていたらという反省もあります。あとはデータの読み取りですね。ソフトの操作方法はわかりやすかったのですが、出力される値が多いので、どこを見たらいいか、最後まで混乱してしまいました。クラスメイトに相談したのですが、彼女も間違えていて(笑)、最終的には先生に聞いて解決しました。
授業でのインプットの多さや、ゼミ活動と同等のボリュームがある全60回の実習は、学生にとって決して楽な道のりではありませんでした。しかし、教員の細やかなサポートや、グループワークでの仲間との議論が支えとなり、最終的には仮説検証までやり遂げる達成感を味わっています。
平野
これまでの学びを通して成長したと思うことや、今後それをどう生かしていきたいかを聞かせてください。
寅本
一番変わったのは、数字に対する意識です。以前は数字を見るだけで嫌悪感があったんですが、今は数字・データをみて物事を判断することの重要性を理解できるようになったと思います。
木田
自分の適性に気づけたことだと思います。実習ではアンケートに取り組めましたし、ゼミではフィールドワークに取り組んでいます。実際に両方をやってみて、自分は数字を扱うよりも、人と話して課題を見つけるフィールドワークの方が得意なんだなということにも気づけました。でも、得意な方だけをやるんじゃなくて、両方の視点を持っていることが大事だと思っています。
数字への苦手意識を克服し、データに基づく判断の大切さを実感できたこと。量的調査と質的調査の両方を経験することで、自分の強みや適性を見極められたこと。これらの成長は、座学と実習を組み合わせたカリキュラムならではの成果だといえるでしょう。
寅本
私は通学時間が長いので、1限・2限連続の実習は体力的に大変でした。それ以外は楽しく授業を受けることができました(笑)。
木田
強いて言うなら、1クラスあたりの人数をもう少し少人数にしてもいいかもしれません。僕たちの学年は受講者が多かったですからね。
受講環境については、時間割やクラス規模など、より学びやすくするための建設的な意見も寄せられました。こうした学生のリアルな声を、より良い教育環境づくりに生かしていきます。