社会調査士をめざす学生の声!
みなさんの学習の参考にしてください

多様なフィールドで現実の社会にアプローチするかけがえのない経験

聞き手:専修大学人間科学部准教授 勝俣達也

 専修大学人間科学部社会学科では、長らく社会調査実習を社会学教育の柱としてきたこともあり、2004年度から社会調査士資格のプログラムを導入しました。必修科目になっている資格科目も多く、カリキュラムにそって学修を進めていくなかで、自ずとキャンディデイトや社会調査士の資格が取得しやすくなっています。2024年度の実績では、1学年あたりの定員147名に対して、59名が在学中にキャンディデイトを取得し、43名が卒業時に社会調査士資格を取得しています。
 ここでは、本学科のカリキュラム上も、また資格取得のプログラム上も最も重要な科目になっている「社会調査実習A」(G科目)を中心に、本学科の学生が資格科目の学修についてどのように感じているのか、私が担当したG科目のクラスの学生の声を紹介したいと思います。今年度の私のクラスでは、「働く女性のキャリアと両立支援」をテーマとして、実際にいくつかの企業を訪問して、担当部署や当事者の方にお話をうかがいました。以下は、最後の授業で1年間をふりかえったときの6名の学生(井澤翔さん、大山悠里さん、櫻井美虹さん、田村光さん、福本優那さん、安永架南さん[いずれも2年生])の感想です。すでにキャンディデイトの資格を取得している学生もいるので、資格取得の目的や他の資格科目で学んだことについても聞きました。

Q. 「社会調査実習A」の授業をふりかえって感想を述べてください。

〇インタビュー調査の“体験”で得られたこと

福本

女性の働き方とかキャリアについては、将来絶対に考えることだし、社会的に言われていることだと、偏見というかあまりプラスのイメージがなくて、男女平等みたいな感じでやっているけど、実際は・・・みたいな。でも、実際の企業のリアルな取り組みや声が聞けて、意外と企業が前向きに取り組んでいて、その実情を知れてよかったです。

井澤

実査の経験は、生の声を聴けたというのもそうだし、自分がこれからどういう会社で働きたいかという願望もできたし、結局、そうやっていろいろ体験したことで、自分のなかの記憶にも残るし、勉強になったなっていう感じがしますね。

大山

私は社会に出ることに対して漠然とした不安があって、それがなくなったわけではないんですが、リアルな声を聴けたことで、ぼやけていた社会とか女性の働き方とか、実際にこういうことがあるんだということを知れたことで、自分のなかで未来のビジョンを考えられるようになったかな。


多くの学生が、子供を持つ女性のキャリアについて(あるいは社会で働くことについて)、どこかネガティブなイメージや思い込みをもっていたのですが、実際に子供を育てながら働く女性たちの声や、人事部の担当者の話を聴くことで、そうしたイメージが表面的であったことに気づき、問題状況をより具体的に捉えられるようになった様子がうかがえます。今回の私のクラスでは企業を訪問しましたが、どのような調査対象でもそこに「社会」と人々の生きる場所や姿があります。とくにインタビュー調査の場合は、現場の方々からリアルな話を聞いて、何かを感じて得ることが、かけがえのない“体験”なのだということも感じているようです。

インタビュー調査の様子

調査対象の訪問先にて

〇データの分析や報告書の作成について

大山

高校生の時とかは文章をつくるときって、土台は与えられてそこから自分で書いていくっていう感じだけど、自分でデータをとって、整理して、分析して文章を書くって、ゼロからじゃないですか。ゼロから、骨組みから自分たちでつくっていくということを経験して、面白かったです。その手法や手順を知れたことは卒論にもつながると思います。

田村

コード化をやっているときは、なんでこんなことしなくちゃいけないんだろうと思っていたけど、実際に報告書を書くときには、コードを見返したりして考えるので、そのときのがんばりがつながるというか、実際に書いてみてわかりました。あと、コードを抽象的にし過ぎると見直してもわからないので、ある程度具体的にしたほうがよいということもやってみてわかりました。


私の担当クラスでは、インタビューした録音を文字起こししたうえで、データをコード化、さらにカテゴリー化して内容を整理したのですが、一連の作業については実際にやってみてその意義やコツを理解できたようです。この科目を1年間を通してやりきることが、ゼミ選びや卒業論文の執筆にもつながっているようです。

〇調査の準備段階での学びから主体性をもって

授業での打ち合わせ風景

安永

私は、実査よりもその準備段階のほうが印象に残っています。育休に関しては、興味関心はあったんですけど、ふたを開いてみると全然知らないことばかりで、会社の人事の仕組みについても、知らないことばかりでした。事前に勉強する準備段階をとおして育児休暇とか女性の働き方についてももっと興味をもつようになりました。この調査実習については、やれといわれたからやるではなく、自分の興味とかでできるようになって、データをつくるときも、楽しいなって思いながらできたので、いままでけっこう受け身な感じだったけど、レポートとかも。準備段階で興味をたくさん持てたのが、よかったなと思います。

櫻井

最初のころ、事前の勉強のために文献を読んで意見交換みたいなことをやっていたんですけど、普通の授業で自分で課題をやっているといつも同じ視点になってしまうんですけど、他者の意見を聞いて、そういう考え方もできるのか、そういう感じ方をする人もいるのかと、人それぞれの個性を知れて、自分の視点も豊かになったと思います。


学生自身の問題関心を育てていくことに加え、実際にインタビューに行く予定があるという緊張感や、学生同士が刺激しあいながら作業をすることで、授業に主体的に取り組むことができたようです。

Q. 社会調査士(キャンディデイト)を取得した理由や、G科目以外の資格科目を取得した際の様子について聞かせてください。

田村

資格を何かとっておいたほうがよいかなということで、社会学の授業を受けてとれるのがこの資格だったのでキャンディデイトをとりました。統計関係の科目は、マーケティングとかの仕事が必要とするところまで勉強できそうだなと思いました。「統計学実習」(D科目)が一番勉強する必要があったというか、共分散とかややこしかったので、勉強しないとよくわからなくなることはあって勉強しました。

福本

データ分析法実習(C科目)と統計学実習(D科目)は大変だったんですけど、私は高校で数学をとっていたのでそんなに数字が嫌とかはなくて大丈夫でした。ただ、有意水準のあたり本当によくわからなかったし、Rの作業とかもいまいちわからなくて何?って感じだったけど、最終的にこことここが関連あるよねみたいなことを根拠をもって書けるときに、ああこうやって役に立つんだと思いました。

安永

私は質的分析法が面白いなって思いました。(会話分析で)めっちゃこまかく文字を起こすじゃないですか。間とか。秒数とか。それがすごくたいへんだったんですけど、社会学で調査をしている人たちはこういう細かいことまでやっているだなと。


資格科目のいくつかが必修科目になっていることもあって、本学科の学生にとって資格取得に対するハードルはそれほど高くなく、就職活動などを意識してとれるものはとっておきたいと考える学生が多いようです。ただし、C科目とD科目については数学に苦手意識がない学生でもしっかりと勉強する必要があったようで、その達成感もうかがえます。

以上、G科目を中心に、本学科の学生たちの声を紹介しました。学生たちは資格取得のための科目を勉強していくなかで、その内容や経験が、本学科の社会学教育のカリキュラムや自分自身の将来にとってどのような意義をもつのか、それぞれに手ごたえを感じているようです。

  • 2025年4月18日UP