社会調査士をめざす学生の声!
みなさんの学習の参考にしてください

「調査のスキル+α」を武器に

聞き手:大東文化大学社会学部 専任講師 香川めい

大東文化大学社会学部は2018年に設置された新しい学部です。第1期生、約200人のうち、社会調査士(キャンディデイト)を取得したのは、なんと65人!卒業時には、さらに多くの学生が社会調査士を取得することが見込まれます。2020年度(座談会実施時)には、4つの社会調査実習のクラスが開講されました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、実習を含む多くの授業はオンライン授業中心になり、当初は予定していなかった様々な制約の中での社会調査を余儀なくされました。成果報告会を終えたばかりの3年生7人(石井優希さん、出井彩菜さん、栗田知佳さん、上西亜美さん、寺田遼一さん、長谷川智彦さん、古谷萌さん)にリモートでの座談会に参加してもらい、これまでやこれからについて語り合ってもらいました。以下はその要約です。

Q.どうして社会調査士を取得しようと思ったのですか?

リモート座談会の様子

入学前から社会調査士という資格があることを知っていた人は誰もいませんでした。とはいえ、「単位を取っていけば、卒業要件単位にもカウントされて、就活のときに話題にすることもできるし、自分の力になるものが増えると思った」、という声や、「(A~C科目が)1年の必修科目だったし、2年次以降は、講義を受けるモチベーションになっていた」という声がありました。また、特に資格取得を意識せず履修していたら、必要な科目の単位が揃っていたとか、時間割上の配当時限がよかったので、必要単位を取得しやすかったという意見も。

卒業要件単位に含まれない授業の単位を取ることが必要な資格の場合は、「資格を取るぞ!」と意気込んで、早い段階から計画的に科目を履修していかないといけないのですが、社会調査士の場合は、ふつうに社会学部開講科目を履修していけば「無理なく」取れるというのが1つの魅力のようです。

Q.社会調査士科目や社会調査実習を実際履修しての感想は?

履修してみて一番大変だった科目として挙がったのは、「量的調査法」(E科目)と「社会調査実習」(G科目)でした。「量的調査法」は履修前とのギャップがあったというよりも、「想像通りの難しさ」だったそうです。確かに、なじみのない記号や数式が多く出てくるし、表計算ソフトや統計ソフトを使いこなせるようにならないといけないので、大変ですよね。担当教員(=聞き手)も頑張ってわかりやすく伝えようとはしているのですが。

「社会調査実習」では、いわゆるアンケート調査をするクラスが2クラス、フィールド調査を予定していたクラスが2クラス開講されていました。調査をするには、実査の前にさまざまな準備が必要になります。今年の場合、実習も大半がオンライン授業になり、それまで話したことのなかったグループのメンバーとリモートで意思疎通をするのが難しかったという感想が多くありました。その中でも、さまざまな工夫をしてグループ内の士気を高めた人もいれば、以前は苦手だったけれど、臆せず人と話せるようになったという声も。今後ますます広がっていくであろうリモートでの共同作業のよい訓練になったともいえそうです。

フィールド調査を予定していたクラスでは、新型コロナウイルス感染症の流行によって、当初の調査地に出向くことが叶わなくなったり、調査を予定していた地域のお祭りが中止されたりして、計画を変更せざるを得なくなりました。それについて「残念といえば、残念だった」という感想がある一方で、「代わりにインタビューしたのが、これまでの生活圏では出会わなかったような職業の人で、貴重な経験になった」、「2年次の演習で地方の調査をしていたので、当初予定されていた(地方の)調査地ではなく、東京での話をきけたことで、地方と都市を比較することができて結果的にはよかった」、「リモートで市役所の人にインタビューをして、コロナ禍における取り組みを聞くことができた」など、予定変更によって生じたプラスの側面も大きかったようです。

アンケート調査で地域調査を行ったクラスの学生からは、(対面授業の回数が限られていて)時間の制約がある中で調査票の封入作業を行ったことの苦労や、土砂降りの中で調査票のポスティング作業を行い、封筒が濡れないようにポストに入れるように気を使ったなどの苦労話が聞かれました(「一番大変だった!」)。さらに、大学内で学生を対象にした調査を行ったクラスの受講生からは、自分たちの意図が伝わるように調査票の文言を考える難しさや、分析をして仮説通りの結果が得られなかったときに、自分たちが「偏見に満ちた」仮説を作っていたのではないか、ということに気づかされたそうです。最初に思っていたこととは違う結果が出てきたときの「気づき」というのも調査の醍醐味の1つです。

フィールド調査もアンケート調査の場合も、調査や分析のスキルだけではなく、他者から上手く話を引き出すことや、相手にどう伝えたらいいのかといった広い意味でのコミュニケーションスキルが身につき、そして、自分自身の気づきにもつながったといえそうです。そうとらえると、大変かもしれないけれど、その分多くのことも得られる授業である、ともいえそうです。

Q.全体を通してどういう力が身についたと思う?

フィールドワークの様子

「就活とかに役立ちそうでしょうか?」という質問に対しては、座談会をしたのが、3年生の1月ということもあり、実際の場面でどう役立つのか、使えるのか、まだちょっとよくわからない、という感じでした。

一方で、今回の座談会を通じて、企業や業界によっては、アピールポイントになると実感したとか、調査データから発展させて、深く考えられるようになったことをアピールしたいという声もありました。調査を実施する上では、順序立てて物事を計画し、具体的な作業に切り分けていくことが必要で、それができるようになったという人も。

具体的な実査や分析のスキルだけではなく、汎用的なスキルを得たという実感も得られるようです。他者との出会いやデータの分析を通して、これまでとは違った見方ができるようになることなど、「+α」の部分が思いのほか大きいのが調査実習の特徴なのかもしれません。

「高校時代から人と関わるような経験をしてきて、フィールドワークがしたかったので、それが経験できて満足した」、とか、「グループで調査をして報告書として、意見を出し合って成果をまとめあげるのは、みんなで1つの『作品』を作り上げるようなもので、楽しい経験だった」という意見もありました。

満足できて楽しい上に、調査のスキル+αの能力が身につけられる。資格取得をゴールにするのではなくスタート地点にして、就活だけでなく、卒業後も「調査のスキル+α」を磨いていってほしいと思います。

  • 2021年2月16日UP