活躍する社会調査士
現役社会人として活躍する先輩からのメッセージです

原田哲志 (専門社会調査士)
早稲田大学大学院文学研究科社会学コース 修士課程 修了
早稲田大学理工センター教学支援課勤務(2018年 4月入職)

※所属は『社会と調査』掲載時のものです。

社会調査で身についたものとは

私は学部と修士課程にかけて社会学を専攻する中、社会調査に強い興味を覚え、量的社会調査を専門とする指導教員のもとで社会調査の様々な側面を学びました。具体的には、全国規模の調査のお手伝いなどをとおして、調査票作成、対象者抽出、調査票の郵送、データ入力、集計、分析などの諸側面を実地で教えていただきました。仮説を立てた上で実際に調査を実施し、得られたデータを統計分析するという、いわば社会調査の「表」の過程はもちろん興味深いものでした。一方、「裏方」仕事のように思われがちなデータ入力作業も、生の調査票を一つ一つ手にとっていく中で回答者の考えと直接向き合えたように感じ、統計数値の背後にあるリアリティに触れられたことをいまでも新鮮に思い出します。

そんな私は現在、早稲田大学の事務員として働いています。普段の業務は学生支援であり、教員免許の取得方法の説明の他に、成績のデータ設定、博士論文の受付などの様々な業務にあたっています。それらの業務が社会調査とどのように関係するのかといえば、確かにそれらの業務は仮説を立て、調査票を作成し、高度な統計分析をするものではありません。

しかし、学生時代に身に着けた社会調査の知識と技能は、やはり現在の業務でも活きています。たとえば、学生の成績データの管理や必要な情報の抽出作業などは、これまでに各種データを扱ってきた経験があるからこそ、深く理解して進めることができています。あるいは、学生からの申請フォームやアンケート作成においても、社会調査で身に着けた、回答者が答えやすい調査票作成の知識が随所で活かされています。

リサーチ会社や大学の研究員ではない私の実感として、多くの業務遂行において、難解な統計手法を使うことはありません(必要な場面もあるので、その知識と技能を学びたいと思う人を全力で応援したいと思いつつも)。しかし同時に、現代社会は調査や分析で溢れており、それらを活かすためには、より幅広い意味での社会調査的な発想、いわば社会調査リテラシーが必要です。そのため、より多くの人が社会調査の基礎知識を持つべきだと日々思っています。

社会的流動性が高まった昨今、どんな仕事に就くのか、就いた仕事を変えるのかどうかなど、職業上の選択肢は増えています。ただ、どのような仕事でも、社会調査の学習を通じて培われた分析力や、調査票作成の中で鍛えられた回答者という他者の視点に立って思考する力は役立つものです。社会調査士認定科目の履修を通じて社会調査に触れる中で、調査の面白さに気付き、多くを学べたことは私の中で活きています。今後も一人でも多くの人が社会調査に興味を持ち、学んでもらえれば、と思います。
(※『社会と調査』27号(2021年9月)より転載)

  • 2024年4月19日UP