「グループで議論しながら作り上げていくスキル」は「成果」と相関する!
2023年3月27日
聞き手:長崎県立大学地域創造学部公共政策学科 講師 伊藤康貴
長崎県立大学公共政策学科では、地域社会の諸課題に対応する能力を身につけるため、公共政策に関する専門知識を学ぶだけでなく、実践科目である「公共機関インターンシップ」「公共政策実習」等により、実際に地域社会の現場に出て実践的な学びを深めています。2016年の学科開設当初から社会調査士科目が設置されており、ここ最近では学科一学年約120名中40~50名程度の学生が社会調査士(キャンディデイト)を取得しています。また、長崎県は日本国内で最も離島の数が多いこともあり、長崎県立大学では、離島について大学内だけでなく実際に現地をフィールドワークする必修科目「しまなび」(「長崎のしまに学ぶ」と「しまのフィールドワーク」のペア科目の呼称・社会調査士G科目)があるのも特徴的です。今回は、新型コロナウイルス感染症の流行が続く状況のなか、就職活動・公務員試験を間近にひかえた3年生の浜岡駿介さんと北川龍我さんとの3人で社会調査士や社会調査に関する大学での学びについて語り合いました(2022年1月5日に実施)。以下はその記録です。
座談会の様子
伊藤
まずはどうして社会調査士を取得しようと思ったのかについて話してもらえますか?
浜岡
僕は長崎県立大学で社会調査士の要件を満たせるように授業をとれば取得できるということだったんで取ったという感じです。
北川
僕も同じ感じですかね。ただ、自分は伊藤ゼミが社会学とか社会調査のゼミだったのでそれと結び付けて、結局は就職活動で活用できるかなというところですかね。
伊藤
なるほど、基本、長崎県立大学の社会調査士の科目は必修になっている科目も多いですし、公共政策学科のカリキュラムに沿って単位をとっていくと自動的に取れるため、取りやすい資格ではあるかなと思いますね。ちなみに社会調査士の資格を知ったきっかけはどうですか?
浜岡
きっかけは長崎県立大学を受験する時に大学のホームページに書いてあったのを見たからです。
北川
僕は入学してからのオリエンテーションで社会調査士についての説明があって、資格が取れると知りました。
伊藤
社会調査士科目を履修するなかで得られたものはありますか?
浜岡
社会に出てからもそうですし、卒論で役立つかは別としても、授業で得た知識やスキルはいろいろと応用できるなと思いました。
北川
僕も応用が利くところですかね。長崎県の地域に関するデータをエクセルなどを使って分析するみたいなことを授業で学びましたが、その学びを応用して、自治体の財政についてレポートを書く際に、その自治体のウェブサイトにある統計情報をエクセルで分析してレポートを作成しました。
伊藤
確かに、実際に会社に入ったり自治体に入ったりしたら、授業で学んだことを使って、分析したり企画を立てたりすると思うので、役には立つでしょうね。
伊藤
長崎県立大学では、2年生(2021年度入学生からは1年生)に社会調査士G科目でもある大学の必修科目として「しまなび」があります。この科目では長崎県の離島について学び、現地をフィールドワークすることになります。皆さんのときは新型コロナウイルス感染症対策のため現地には行けませんでしたが、どうでしたか?
浜岡
授業では、離島の産業や名産品などを学び、普段話さない人たちとグループになって島の振興策を考えたりしました。ただやはり、実際に現地に行って調査をするということをやってみたかったです。
北川
離島について学ぶことは長崎県立大学の強みだと思っているので、現地に行きたかったというのはやはりあります。データだけではわからない地域の声とかがあると思います。
しまなびでのグループワークで振興策案を考え合った際のホワイトボード
伊藤
3年生になると選択必修科目として「公共政策実習」や「公共機関インターンシップ」があり、活動のなかで社会調査を行うこともあると思いますが、そこでは社会調査士科目での学びはどう活用されましたか?
浜岡
僕は公共政策実習の方を選択しました。公共政策実習の活動時期が夏休み中であったため、その時期に一気にいろんなボランティアをやろうってことで、卒論のテーマに関連するボランティアを行い、コロナ前とコロナ後でボランティアの活動の内容や方法にどのような変化があったのかを調べてみました。オンラインと対面の活動どちらも参加し、オンラインでは在日外国人の方々の日本語の向上を手伝い、対面では小学生の宿題の手伝いなどをしました。ボランティアでは2時間ほどかけて大村市の方にも行ったんですけど、公共政策実習がなかったら佐世保から大村市の方までボランティアに行ってなかったと思うので、活動の範囲を広げるいい機会になったのかなと思います。
伊藤
大学の科目になってるから、それがきっかけになって「行ってみよう」というのはあるでしょうね。
北川
僕はインターンシップに行く予定だったんですけどコロナ禍により中止になってしまって、代わりに卒論に向けて1年生のときから関わっている「票育」(長崎県大村市が行う若者の政治や選挙への関心を高めるための事業)に参加しました。コロナ禍でインターンが中止となったため、自分で計画を立てて、立てた計画がまたコロナでダメになったら修正してみたいな感じでした。ただ、自分で考えて計画を立てるっていう経験はすごい今後に活かせるのかなって思います。今後は卒論に向けてインタビューや量的調査も計画しています。
伊藤
公共機関インターンシップは2週間から1カ月程度、長崎県立大学と提携した大学周辺の自治体等にインターンすることになり、もちろんそこでも業務を遂行する際に授業で得たものを活用することになります。公共政策実習ではまず自分で実習先を開拓し、計画を立て、学外で活動することになるので、社会調査の過程とつながるところはあると思いますね。
2021年12月16日に実施された2021年度公共政策実習最終報告会の様子
伊藤
就活なり公務員試験なりでは社会調査士資格はどう役立つと思いますか?
北川
社会調査士に限らず、資格はもってて当然で、それをどう使いこなしているかで評価されるのかなって個人的には思いますね。社会調査士の資格は大学のカリキュラムに沿って勉強すれば、だいたいの人は取れるので、それを今後どう活かしていけるのかで社会調査士の資格を持つ意味も変わっていくのかなって個人的には思いますね。
伊藤
確かに車の免許持っているからといってそれで車の運転うまいかといわれるとそうじゃない訳で。だから、ただ資格を取るというだけでなく、就活とかでは自分が社会調査士科目などの授業で得られたものをインターンシップや卒論などにいかに結び付け、活動や調査研究を遂行したかを表現できるといいのかもしれないですね。
座談会終了後に、今度は社会調査士の授業を受けている学生たちにも社会調査士について聞いてみました。以下、いくつかご紹介します。