峯俊洸大(社会調査士)
2019年北海道大学大学院文学研究科卒業
株式会社クロス・マーケティングに勤務(2019年入社)
※所属は『社会と調査』掲載時のものです。
顧客のマーケティング課題に対して、データを根拠とするデータドリブンな解決策を提案する「データマーケター」というポジションで、私は日々お客様と向き合い活動している。
マーケティングリサーチを主幹事業とする弊社において、私の担当するデータマーケティングという領域は新規事業に位置づけられる。この領域では、リサーチデータに限らず、顧客の保有する多岐に渡るデータをエンジニアリング力を駆使しながら分析し、課題解決に適したインサイトを見つけ出すことが求められる。そんな役割を上手くこなすことができるのだろうかと、入社当初は不安を感じたことを覚えている。しかし、入社して3年が経った今、日々の業務に社会調査士課程での学びが活きていることを実感している。
顧客からあげられる課題は、その方の業種や所属部署によって異なる。自社の商品・サービスの売上促進に向けたヒントを得たいという王道の課題から、自社アプリにおけるターゲティング配信を効果的に行うためのセグメントを構築したいという課題、自社サービスのユーザーにとってのベネフィットを利用ログから明らかにしてセールスに活かしたいという課題など、ひとえに「データ」を扱った課題解決ソリューションを提供するといっても、目指すべきゴールは様々である。
こうした多様な課題に対して「データ」を基に解決策を提示する際に重要となるのが、「顧客のビジネスの現状」を正しく理解し、適切な仮説構築を行った上で、「データから得られる情報」を活用することである。多種多様なデータに触れる機会のある現職においては、しばしば目の前にあるデータを用いた集計・分析結果が、課題に対するすべての答えを教えてくれる万能薬かのような錯覚に陥ることがある。しかし、私はその都度、データは課題解決のための「手段」の一つであり、それが「目的」となってはいけないと自分に言い聞かせるようにしている。
その根底にあるのは、社会調査士取得課程で学び実践した、社会現象の本質的な背景を理解し、自身で課題に対する仮説構築を行った上で、量的・質的の双方の手段を用い検証を行うという一連のプロセスを重視する姿勢である。この過程で、各現象が生じる仕組みについて個人や環境に起因する様々な要因から仮説を構築し、その仮説検証のために適切な手法を選ぶという考え方を学ぶことができた。この時の経験が、データを悪戯にこねくり回し実態に合わないインサイトを提示する自己満足なアナリストではなく、顧客課題における要因に対してしっかりと仮説を立て、その検証のためにデータを扱う顧客本位の「データマーケター」としてのキャリア形成に大きく役立っている。
どのようなビジネスでも、生じた課題の解決策を検討するプロセスは生じるはずである。そのためのアプローチのあり方の一つを身に着けることができる社会調査士は、志望する業種・業界問わず幅広くお勧めしたい資格である。
(※『社会と調査』30号(2023年3月)より転載)