市川紗菜美(社会調査士)
2019年、静岡大学人文社会科学部社会学科 卒業
ひまわりネットワーク株式会社勤務
※所属は『社会と調査』掲載時のものです。
私が学んだ静岡大学人文社会科学部では入学後に専攻を決める。私は1年次の基礎科目の授業がきっかけで社会学に興味を持ち、社会学を専攻した。社会学を学ぶ過程で質的調査や量的調査の実習に参加し、調査手法を学んだ。なかでも、調査結果を数値化して社会を読み解き結論を導く量的調査に魅力を感じた。そこで、3年次からは計量社会学のゼミを選択し、卒業論文ではパネル調査の二次分析に挑戦した。
大学卒業後は地元・豊田市のケーブルテレビ局・ひまわりネットワーク株式会社に入社し、営業部で働いてきた。「営業部」と聞くと訪問営業や法人営業を想像する人が多いと思うが、私の仕事はいわゆるカウンター営業だ。各地区に設けられた店舗でサービスの申込や変更の受付をしたり、ご加入者様からテレビやインターネットなどの操作や不具合の相談を受けたりしている。ときには店舗で相談会や周年祭などのイベントを開催することもあり、サービスの加入促進とお客様満足度の向上の両方を担っている仕事である。
いままでの私の仕事内容を思い返すと、入社後に「社会調査」と呼べるものに直接関わる機会はなかったが、大学時代に学んだ社会調査の手法や実習の経験が活かされていると感じた場面があった。例えば、イベントを開催する際にはアンケートを作成し、イベントを知った告知媒体や来店のきっかけなどのデータを取得する。アンケートの質問事項や回答となる選択肢を考える際には、質問の焦点を1つに絞り、2つ以上の論点を含まないよう留意したり、網羅的かつ排他的に選択肢を設けることを意識したりして、アンケートを作成してきた。
くわえて、お客様へのヒアリングにはインタビュー調査の経験が活きていると感じる。サービスへの加入相談にしても、不具合の相談にしても、まずはお客様のお話をしっかりと聞き、適切な質問をすることで自分自身が知りたい情報を引き出す必要がある。大学時代の実習では、質問の仕方の重要性を学びながらも、実際のインタビュー調査ではうまく話を展開できなかった苦い記憶がある。その経験をばねにしながら、繰り返しヒアリングを実践していくことで、滞りなくお客様対応ができるようになったと感じる。
正直なところ、在学中や入社当初は私が携わる業務において社会調査士の資格取得課程で学んだことが活かされることは多くないと思っていた。実際、業務のほとんどは業界の知識を活用した営業活動やお客様サポートである。しかし、日々の業務を振り返ってみると、調査・分析の手法や経験と私の仕事とは切っても切れない関係があると実感している。ヒアリングひとつ、アンケート作成ひとつをとっても、社会調査について学んだ私だからできる方法やアイデアで進められる仕事があると感じる。これからも社会調査士課程で学んだ手法や経験をどんな仕事にも活用しながら、お客様に寄り添ったより上質な対応を目指していきたい。
(※『社会と調査』29号(2022年9月)より転載)