活躍する社会調査士
現役社会人として活躍する先輩からのメッセージです

星野咲希(専門社会調査士)
2014年3月、東北大学文学部人文社会学科国文学研究室卒業
2018年3月、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ジェンダー社会科学専攻 修了
国立女性教育会館 勤務

※所属は『社会と調査』掲載時のものです。

情報を必要としている人に、適切な情報を

国立女性教育会館情報課で、女性・家庭・家族やジェンダーに関する専門図書館である女性教育情報センターや、女性アーカイブセンターでの業務を主に行っています。みなさんは「情報を必要としている人に、適切な情報を」というタイトルから、どのようなことをイメージするでしょうか?

私の日々の業務のひとつに、新聞をチェックして当センターの主題に関する記事をクリッピングする、というものがあります。就職したばかりの頃、自分では気がついていなかった記事を上司から指摘されることが多く、ジェンダーに関する問題は自分が思っていたよりもはるかにたくさん、いたるところに存在することに気がつき、衝撃を受けたことを覚えています。

2年間業務をしたのち、研修制度で大学院に進学し、社会調査士、専門社会調査士資格を取得しました。そのなかで、調査はそれぞれ意図をもって綿密に設計されていること、政府統計などの大規模調査や、ある特定の状況にある人を対象としたインタビュー調査など、それぞれの調査ごとに特徴があることを改めて学びました。これまで業務で扱っていた新聞記事に現れる数字やさまざまな分野の報告書なども、その背景を考えるだけでなく、調査が適切に行われているか、その調査をどのように活用できるかという視点からも考えるようになりました。

大学院を修了してからは、現在に至るまで女性教育情報センター、女性アーカイブセンターに関する業務を続けています。直接社会調査に関わる業務をしているわけではありませんが、専門社会調査士の資格を取得する課程で得た知見が活きていると感じられることも多々あります。

たとえば、女性アーカイブセンターでは、さまざまな分野においてチャレンジした女性たちのあゆみをたどる展示を行っています。手書きの資料や当時の写真などから個人の想いや時代の雰囲気を伝えるのはもちろん、女性の社会進出など、社会の変化の過程については、統計情報を分かりやすいグラフなどで表すことで、来館者の理解をより深めることを心がけています。

また、レファレンス業務では、利用者の関心のありかを聞き出し、適切な情報を提供します。分野に関する知識はもちろん必要ですが、提供する資料の信頼性を確認することや、利用者がその情報を今後どのように調査・研究に役立てていきたいのかを考慮した上で資料を提供することに、専門社会調査士の視点が活かせると考えています。

もともと、「情報を必要としている人に届けたい」と志した図書館の仕事です。ジェンダーに関する問題はあらゆる領域に広がり、ときとして個人の実感や抱える問題を分かりやすく周りに伝えることが難しいこともありますが、そのようなときに役に立つのが情報だと思います。とくに社会調査は、自分だけの問題だと思っていたものが、実は社会的な問題であることが統計調査から数字で分かったり、同じような問題を抱える人々について適切な手法で調査されていたりするので、自身の問題意識を広げ、また説得力のある主張の根拠となりうる重要な情報です。今後も資格取得で学んだことを活かし、たくさんの情報のなかから利用者が本当に必要としている情報を届けられるよう努めます。
(※『社会と調査』25号(2020年9月)より転載)

  • 2023年3月20日UP