活躍する社会調査士
現役社会人として活躍する先輩からのメッセージです

高倉 文(社会調査士)
2007年3月、千葉大学文学部 卒業
りらいあコミュニケーションズ株式会社勤務

※所属は『社会と調査』掲載時のものです。

電話調査のプロとして

「電話調査」は言葉としてご存知の方はいらっしゃると思 います。しかし、郵送調査や訪問調査と比べると学生時代に学ぶ機会が少なく、手法など実務のイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。もちろん、私自身もそうでした。
私は現在、主にコールセンターの委託運営を行うテレマーケティング会社の調査部門で働いています。調査会社に就職したいとも思いましたが、当社に調査部門があることを知り、電話ならば「○○という 点がすごく良かった」、「ここをもっと改善してほしい」といった数字で表現することができない部分、つまり生の声を聞くことができることに惹かれ、入社を決めました。

コールセンター(最近では電話だけでなく、メールやチャット・FAXなど様々なチャネルによってコミュニケーションを取ることから、「コンタクトセンター」とも呼ばれます)では、そこで働くオペレーターが対応するのは一般的に顧客や消費者で、疑問点や不明点について問い合わせを受けたり、よりよいサービスや商品をご案内したりすることがほとんどです。
一方で、私が所属している部署では、主に世論調査業務を担当しており、RDD(ランダム・デジット・ ダイヤリング)という、コンピューターでランダムに作成した電話番号に発信する方法で調査を実施しています。そのため、電話の相手は顧客や消費者ではなく、名前も性別も年代もわからない方です。

当社名ではなく、当社のクライアント名を名乗ってお電話しますが、どんなに有名な企業名だったとしても、調査対象者からすれば電話がかかってきて、突然に調査のお願いをされることになります。そのような状況で、調査の趣旨をきちんとお伝えし、ときには突然のお電話に対するご質問や不信感に対してスムーズにご説明をしなければ協力は得られません。「電話」というツールでは「音」だけが頼りです。一文を短くしたり、難しい言葉や同音異義は避けたりと、「耳で聞いてわかりやすく」という観点が必要になってきます。また、オペレーター全員が同じルールで調査を行わなければ、正しい結果が得 られませんので、オペレーターへの教育も非常に重要です。大学時代に学んだことで強く印象に残っているのは、「聞きたいことを聞くだけでは調査とは言えない。きちんと仮説を立てて、その結果をどう生かしていくかという目的までを考えた上で調査設計をしなければならない」ということです。今の私の立場では調査業務の企画・設計をすることはあまりないです。それでも調査の目的を理解した上で、クライアントからのご依頼をそのまま受けるだけではなく、調査のプロとして電話調査ならではの特性や注意点をお伝えしながら確実に実務を遂行することで、より質の高い調査になるように心がけています。
(※『社会と調査』20号(2018年3月)より転載)

  • 2020年3月24日UP