活躍する社会調査士
現役社会人として活躍する先輩からのメッセージです

川窪耕平(専門社会調査士)
2015年3月、早稲田大学大学院文学 研究科人文科学専攻社会学コース修了、修士(文学)
株式会社日経リサーチ勤務

※所属は『社会と調査』掲載時のものです。

回答者を意識した調査票作成の重要性

私は現在、調査会社に勤務しています。調査と一口に言っても、郵送調査・面接調査・留置調査・ 電話調査・WEB調査など様々な種類がありますが、その中でもWEB調査の運用を担当しています。具体的には、WEB調査サイトの作成、対象者へのメール配信分析用のデータ出力と、WEB調査サイト作成からデータ作成までの業務を担当しております。

さて、調査とダイレクトに結びついた職に就いて いるわけですが、毎日「調査」「調査」「調査」と調査に追われる日々です。当たり前ですが、調査は目的ではなく手段の一つです。ただ、私の業務は完全に「調査をすること」のみで、その先の「分析」までは担当していません。「そんなのはつまらない」と感じる方もいらっしゃるとは思いますが、決して軽んじてはいけません。そこで、実務を通じて私が感じた「当たり前だけど、調査をする上で大切なこと」を述べたいと思います。

まず、調査に回答するということは「途方もなく面倒である」ということです。私自身、学生時代の講義で「調査とは、回答して頂くもの」と習いました。当時はあまり心に響かなかったのですが、今はそのことを痛感します。というのも、WEB調査サイトを実際に回答してチェックしたりするのですが、正直とても面倒です。そんな面倒なものに回答して頂くのですから、「回答して頂く」という心掛けは必須です。では、回答者にとって少しでも回答しやすい調査とは何か? 難しく考える必要はありません。「文章は簡潔にする」「大量の選択肢は用いない」「難解な表現は避ける」などのことを心掛ければよいのです。これらは講義でも習うことかと思いますが、分析ありきで調査票を作るとどうしても忘れがちです。

そして、調査票作成ないし実査におけるミスは、分析に至るまで調査全体のミスということです。たとえば、回答者がミスリードするような難解な調査票で、誤った回答や適当な回答が多数を占めてしまうとデータそのものの揺らぎにもつながります。データ修正プログラムで対応できれば、最悪の場合問題はないですが、調査票作成ミスによって再調査をしなければならないということも私は経験しました。

いずれにせよ、「回答者が答えやすい調査にする」ということは、調査そのものの成功へと直結するものだと私は考えます。急がば回れです。これからもそのことを肝に銘じて、実査担当として調査そのものを支えられる存在でありたいと思っています。
(※『社会と調査』18号(2017年3月)より転載)

  • 2018年10月15日UP