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社会調査に関する初歩的な問いから専門的な疑問までお答えします。


A~Z

あ行

  • Q. 【選ばれる理由】過去に個人情報を教えたり登録したりしていないのに、新聞社の世論調査や大学の学術調査の対象に選ばれることがあるはなぜですか?

    新聞社や通信社が実施する世論調査は、現在多くの場合RDD(Random Digit Dialing)法に基づいて実施されています。
    RDD法は、コンピュータで電話番号をランダムに発生させて世帯番号にかかった場合のみ調査する電話調査の方法であり、調査主体は対象者の電話番号を元々知っているわけではありません。
    いわば、電話番号を乱数のように発生させて、たまたま出た番号にかけているようなものです。
    したがって、新聞社の世論調査の対象になったことは偶然であり、そのことが調査の信頼性の基礎になっています。
    大学や自治体の郵送調査の対象として調査票が送られてくる場合の多くは、選挙人名簿や住民基本台帳などから選ばれています。営利目的でない学術調査研究は、選挙人名簿を閲覧してそこからランダムに調査の対象者を抽出することが法律で認められています。
    調査実施主体は、選挙人名簿の閲覧を各自治体の選挙管理委員会へ申請し、許可された場合には選挙人名簿からランダムに対象者を選びだしていきます。したがって、この場合も調査の対象になったことは偶然であり、そのことが調査の信頼性の基礎になっています。

か行

さ行

  • Q.【視聴率調査】視聴率調査はどれだけ信用できますか?

    視聴率調査は、少ない標本で母集団を推定しようとする「標本調査」の典型と位置づけられます。ビデオリサーチ社では、関東地区約1600万世帯の中から、ランダムに600世帯をサンプリングし、それぞれにオンラインメーターを設置して、視聴動向を測定しています。機械が設置されている世帯がランダムサンプリングによって抽出されているならば、標本誤差を計算することによって、約1600万世帯の視聴率について母集団推定することが可能です。
    関東地区でかりに視聴率30%という数字が出た場合、標本誤差は±3.7%と計算できますが、これは、「26.3%~33.7%の世帯で視聴されていた」という判断が、100回の調査のうち95回は正しい(危険率5%)という統計学的な数字を意味しています。
    このように視聴率という数字は、誤差の幅があるわけで、1%単位で数字を競っているテレビ局の姿は、統計学的にはやや滑稽だといえるかもしれません。

た行

  • Q. 【多変量解析】ある社会意識を従属変数にして多変量解析を行ってみましたが、どの独立変数も有意ではありませんでした。こうした分析結果には意味がないのでしょうか?

    社会調査データを分析している研究者の中には、「有意」な関連を見つけ出すことだけに関心を払っている人がしばしば見かけられますが、ここには「統計データ上の関連の有意性」と「研究上の発見の有意義性」との混同があります。
    たとえば、社会調査データの分析で、学歴、職業、勤務年数などをコントロールした上で、性別と給与水準との関連を調べてみたら「有意」ではなかったという結果が出てきたとしたら、それは、「少なくともそのデータでは、性別により給与格差は認められなかった」という、非常に有意義な発見がえられたことになります。
    統計的な有意性のなさは、たんに「母集団において変数間の関連がない」という帰無仮説をデータからは棄却できない、ということを意味するにすぎません。そうした分析結果がえられたことは、むしろ有意義な発見であることがよくあります。
    したがって、たんに「統計的に有意でない」結果しか得られなかったことから、「この分析には意味がなかった」と考える必要はありません。

な行

  • Q.【内閣支持率】内閣支持率などの数字が報道各社で異なるのはなぜですか?

    内閣支持率などを測定する世論調査はランダムサンプリングを用いるため、標本誤差が生じます。したがって各社の間で完全に内閣支持率などの推定値が一致することはまれです。
    また、面接法や電話法など調査モードの違いや、質問の順番やワーディングの微妙な差異、調査日の違いが影響することもあります。さらに、調査主体の違いによって回答者に偏りが生じる可能性があります。
    たとえば、朝日新聞の調査では、朝日新聞の購読者の方が他紙の購読者よりも調査に協力しやすい傾向が生じる可能性があります。
    このように、さまざまな違いが母集団の推定値の違いに現れてくるため、どの数字が正しいということは一概にはいえません。各社それぞれの実施方法の下では、それぞれの数字が正しいということになります。
    一方、各社間での単純な比較が困難であることに注意した上で、同じ調査主体が全く同じ方法で継続的に実施している世論調査データから時系列的な変化を見ていくことには大きな意味があります。

は行

ま行

  • Q. 【無作為抽出】社会調査はどんな場合にも無作為抽出でなければならないのですか。どんなときであれば、無作為抽出を行わなくてもいいのでしょうか?

    無作為抽出は、ある母集団について、すべてのケースを調査する代わりに、一部の標本を取り出して調査した結果からその母集団におけるなんらかの変数ないし変数間の関係の分布を推定したいとき、合理的な推定を可能にするため、「母集団のすべてのケースについて、抽出される確率が等しい」となっている抽出方法です。たとえば、20歳以上のすべての有権者を母集団とするときの内閣支持率の調査などは、原則として無作為抽出がとられます。したがって、逆にいえば、母集団が想定されていなかったり、明確に設定することが難しいときは、無作為抽出は必要でなかったり、不可能であったりします。たとえば、非正規雇用労働者の生活実態を知りたいというような場合、非正規雇用労働者の概念にはいくつかのものがあって、その母集団も明確ではありませんし、かりに明確であったとしても、あらかじめリストがあったり公開されていたりはしません。そうした場合は、無作為抽出は不可能で、その代わりに、なんらかの観点から研究関心にとって適切だと思われる他の抽出方法を採用せざるをえません。

や行

ら行

  • Q.【リサーチ・クエスチョン】リサーチ・クエスチョン(Research Question)は、どのようにして立てればよいのですか?

    どの研究にも解こうとする問題が必ず存在します。広義には、こうした解くべき問題がリサーチ・クエスチョンと呼ばれていますが、社会調査では、被説明変数(結果に相当する変数)と説明変数(原因に相当する変数)を設定したうえで、どのように説明変数が被説明変数に影響を及ぼしているのかについての説明も含める形でより具体的かつ端的に解くべき問題を示したものがリサーチ・クエスチョンです。
    社会調査をしようとする初めの段階では、取り組みたいテーマはほとんどの場合、漠然としています。「人はどういう時に転職をするのか」に関心があり、量的調査でこの問題を検討する場合を例に説明してみましょう。まず、被説明変数を決定しなければなりませんが、ここでは単純に「転職経験の有無」で測定することにしましょう。次に、転職をする人としない人の違いを生み出す説明変数と、それがどのように被説明変数に影響を及ぼしているのかを考えなければなりません。その際には先行研究や統計データ、実際の事例などを調べたうえで検討する必要があります。その過程で転職回数は多い人と少ない人に二極分化していることがわかったとします。そこで、被説明変数を「転職回数」に変更し、「何度も転職する人とほとんど転職しない人の違いをもたらす要因は何なのか」という、より具体的な形で解くべき問題が特定化されていきます。日本では同じ仕事でも企業規模によって賃金や福利厚生といった待遇の格差が大きいことに着目すれば、「初めての勤務先の勤務条件がよければ転職しようと思わないだろう」と考え、初職の企業規模も説明変数に加えるという手順を踏むことになります。さらに、年齢が高ければ転職する可能性は当然多くなるので、コントロール変数として年齢を含める必要があると考えます。こうしたできたリサーチ・クエスチョンをさらに具体化していけば(被説明変数と説明変数の各々の質問項目を決定するなど)、それが仮説(hypotheses)となります。
    こうした検討の仕方は基本的に質的調査でも同様です、一般に質的調査の場合には調査を開始する段階では量的調査ほどにはリサーチ・クエスチョンは特定化されておらず、インタビューや参与観察などをおこなう過程で明確になっていく場合がほとんどです。

わ行