令和4年度 社会調査協会賞 授賞式が執り行われました

第12回社会調査協会賞(優秀研究活動賞と『社会と調査』賞)の授賞式が、2022年11月26日(土)、社会調査協会事務局において、Zoomによるオンライン形式で行われました。受賞者は以下の2名の方々です。

優秀研究活動賞 1名

多喜弘文 氏(法政大学社会学部 准教授)
  • 主な調査研究テーマ
    社会階層論、教育社会学、短期高等教育、比較社会学

『社会と調査』賞 1名

白川俊之氏(広島大学大学院人間社会科学研究科 准教授)

「子どもによる社会経済的背景の報告とその妥当性-高校生と母親調査の追跡調査データを用いて」『社会と調査』第27号, 2021年

  • 主な調査研究テーマ
    教育社会学、計量社会科学

選考委員長報告

優秀研究活動賞は、「社会調査活動を継続的に行い、それに基づく優れた研究業績をあげている者を表彰する」ものです。原則として受賞年度の4月1日時点で45歳以下であり、特定の論文・著書・調査報告に限定するのではなく研究業績の全体を評価することが重視されます。慎重に選考を行った結果、第12回優秀研究活動賞の受賞者として、多喜弘文氏を決定しました。

多喜氏の審査の対象著書は、単著『学校教育と不平等の比較社会学』(2020)と論文「専門学校から職業への移行」『少子高齢社会の階層構造1 人生初期の階層構造』(2021)の2点です。『学校教育と不平等の比較社会学』では、教育機会の不平等生成について、比較社会学的視点からPISAデータを用いて国際比較を行い、「特殊」と理解されてきた日本の位置づけを明確にし、国際比較研究に適用可能な新たな枠組を呈示した点が高く評価されました。「専門学校から職業への移行」では、2005年と2015年のSSM調査結果を用い、「専門学校学籍保持者」の学校から職業への移行に焦点を当て、職業的地位に対する学歴効果の検討を行い、特に男女間にみられる学歴効果の違いなど興味深い特徴を指摘しています。また、国際査読誌への投稿や国際学会での報告などにも積極的に取り組んでいます。

さらに、「2015年社会階層と社会移動(SSM)調査」や東京大学社会科学研究所が実施している大規模調査プロジェクトに関わっているほか、高校生を対象とした複数の調査プロジェクトに参加するなど、調査経験も豊富で、社会調査データの創出についても重要な役割を果たしてきました。
以上のように、教育社会学分野での優れた研究業績にとどまらず、社会調査全体に対して大きな貢献をしてきており、優秀研究活動賞に相応しいと選考委員会が判断しました。

『社会と調査』賞については、選考委員会が開催された直前2年間に刊行された『社会と調査』に掲載された社会調査協会会員および専門社会調査士による論文を対象として選考が行われました。原則として、受賞年度の4月1日時点で45歳以下であること、『社会と調査』に掲載された投稿論文ならびに特集論文、調査事例報告を含む論文を対象とすること、の2点を考慮しながら、慎重に選考を行った結果、第12回『社会と調査』賞の受賞者として、白川俊之氏を決定しました。白川氏の受賞対象となったのは、『社会と調査』第27号に査読論文として掲載された「子どもによる社会経済的背景の報告とその妥当性」です。これは、親の社会経済的地位(SES)を把握する際に、よく利用される子どもの代理回答が正当な手法であるかを検討したものです。2012年に実施された「高校生と母親調査2012」に協力したモニター(高校2年生とその母親)に対して、2019年に追跡調査を行い、回答を得た583名を対象として分析が行われています。

この研究は、代理回答の妥当性という重要なテーマについて、家庭の社会経済的背景に関する親子ペア(母親と子ども)の情報を用いて検討した点が高く評価されました。母親の学歴の方が父親の職歴よりも正確に報告される傾向にあるといった点をはじめ、調査結果として提示された諸点は、とりわけ子どもを対象とする調査に関わる人たちに有益な示唆を与えるものとなっています。

以上の理由から、本論文は『社会と調査』賞に相応しいと判断しました。