平成25年度社会調査協会賞 授賞式が執り行われました

第3回社会調査協会賞(優秀研究活動賞と『社会と調査』賞)は、石田 浩委員長のほか、小内 透、熊谷苑子、玉野和志、中村高康、藤本昌代、前田忠彦(50音順)の各委員、および表彰・助成委員会の原 純輔委員長とからなる選考委員会において、慎重な選考の結果、以下の3名の方が今年度の受賞者として決定されました。
授賞式は、平成25年11月17日(日)、如水会館において執り行われました。

優秀研究活動賞 1名

三 輪  哲 氏 (東北大学大学院教育学研究科 准教授)
  • 主な調査研究テーマ
  • 社会階層と社会移動、階層分類と不平等の測定、若年者の家族形成

『社会と調査』賞  2名

樋 口 耕 一 氏 (立命館大学産業社会学部准教授)

「質問紙調査における自由回答の分析―KH Coderによる計量テキスト分析の手順と実際」
『社会と調査』第8号, 2012年:92-96頁

  • 主な調査研究テーマ
  • 社会調査法としての内容分析・テキストマイニング、イノベーションの普及過程
森 本 栄 一 氏 (株式会社ビデオリサーチ調査業務局調査分析部主事)

「数量化理論の形成」『社会と調査』第9号, 2012年:5-16頁.

  • 主な調査研究テーマ
  • データサイエンス、マーケティングサイエンス、統計学史

選考委員長報告

第3回社会調査協会賞の選考委員会は、2013年7月15日と10月14日の2回、東京の社会調査協会で行われ、上記のように受賞者を決定しました。

優秀研究活動賞は、原則として受賞年度の4月1日時点で45歳以下であることを考慮しながら、社会調査に関わる活動全般について評価するという目的のため、研究業績の水準の高さ、社会調査の分析手法の普及に関する貢献、そして社会調査データの創出に係る学術コミュニティーへの貢献という3つの観点から、検討を重ねた結果、三輪哲氏に決定しました。
三輪氏は、世代間移動や階層意識をはじめとする社会階層に関する研究、若年の交際・結婚などを対象とした家族社会学の研究、そして計量分析の手法に関する論文など多様な領域にまたがって、斬新な計量分析の手法を多様な応用場面に拡張した優れた研究実績があるとともに、社会調査協会のS科目の講師をはじめ、ICPSR国内利用協議会、数理社会学会、東京大学社会調査・データアーカイブ研究センターの計量分析セミナーなどにおける講師として、社会調査の計量分析手法を解説し普及させることにも大きく貢献してきました。さらに三輪氏は、「2005年社会階層と社会移動調査」の職業コーディング、職歴データのクリーニングや2007年から継続している東大社研パネル調査の企画・実施・クリーニングなど、質の高い社会調査データを学術コミュニティーに提供する活動に深くコミットされてきました。以上のように、優れた研究スタイルに貫かれた研究業績と社会調査データの分析手法の普及および新たな調査データの創出による学術コミュニティーへの貢献により、受賞に相応しいと選考委員会は判断いたしました。

『社会と調査』賞については、選考委員会が開催された直前2年間に刊行された『社会と調査』に掲載された会員および専門社会調査士による論文を対象として選考が行われました。原則として、受賞年度の4月1日時点で45歳以下であること、『社会と調査』に掲載された特集論文を含む論文を対象とすること、の2点を考慮しながら、慎重に選考を行った結果、第3回『社会と調査』賞の受賞者として、樋口耕一氏と森本栄一氏を決定しました。

樋口氏は、『社会と調査』第8号に掲載された「質問紙調査における自由回答の分析―KH Coderによる計量テキスト分析の手順と実際―」で、自由回答項目のようなテキスト型のデータに対して、フリーソフトウェアKH Coderを用いて共起ネットワーク分析や対応分析といった計量分析を行う手順を実践的に紹介しています。体系的な分析が難しかったテキスト型データに関して、計量テキスト分析の枠組みを容易に適用できる可能性を示したことが評価されました。

森本氏は、『社会と調査』第9号に掲載された「数量化理論の形成」で、日本における統計研究の巨匠のひとりである林知己夫博士により開発された数量化理論の形成過程を丹念に分析しました。林の数量化理論の統計解析手法のたんなる解説ではなく、理論が生みだされてきた社会的な背景、問題設定、直面していた具体的な解決すべき課題などを明らかにしたことが高く評価されました。

(石田 浩)