ご挨拶

皆さん、こんにちは! 私は、社会調査協会理事長の谷富夫と申します。

本協会の主要なミッションは、社会調査士という資格の認定です。そこで、以下のメッセージを主に、“将来の”社会調査士とその関係者―すなわち、この資格を検討中の大学生と親御様、ならびに大学で何か資格を得たいと考えている高校生と親御様、それに高校の先生と、企業等の学卒採用担当者様―に、送らせていただきます。もちろんそれ以外の方にもご一読いただき、協会の活動に関心を持っていただけましたら、望外のよろこびです。

社会調査とは、ごく簡単に言えば、社会的な事柄に関してデータを収集し記述し分析する一連の営みです。たとえば、国や自治体が政策立案に向けて、社会生活に関する市民の意見や意識をできるだけ正確に把握する。また、企業が商品開発・改良のために、消費者のニーズや欲求を的確に把握する―こうした営みは、現代社会の政治と経済の仕組み(民主主義と資本主義です)において必要不可欠です。そこで、社会調査の専門家を育成し、社会に送り出すために、2003年に日本教育社会学会と日本行動計量学会と日本社会学会が共同で「一般社団法人社会調査協会」を創設しました。

協会設立から20年余り―この間、学部で所定のカリキュラムを履修し、「社会調査士」の資格を持って学園を巣立った学生が優に4万人を越えました。さらに、より高度なスキルを習得した「専門社会調査士」が約4千人を数えます。こうした人々の実社会での活躍ぶりは、このホームページの 【学生サイト―活躍する社会調査士】でご覧になれますので、ぜひ立ち寄ってみてください。

ところで、私も大学教員の現役時代は毎年、社会調査士資格関連の講義や実習を担当していました。そして、年度があらたまるたびに同じことを受講生から尋ねられました―「この資格は何の役に立つのですか?」

私の答えはこうです。「この資格は、教員免許や司書資格などとは違って専門職の通行手形ではありません。しかし、2つの点であなたの存在価値が社会的に証明されます。1つは『社会調査』がキチンとできる人であること。もう1つは、あなたが『個人情報』を適切に扱える人であること。だから、就活の面接でもこの資格の特徴を積極的にアピールしたらよい」と。

そうすると、就活を終えてキャンパスにもどってきた学生たちがこんな報告をします。「面接でこの制度の説明をしたら、私の卒業研究に興味をもってくれて、かなりの時間を割いて私の調査方法や調査体験など、いろいろ質問されました」。そう言って、爽やかな笑顔を見せるのです。卒業生からも「就職先で新規事業の調査プロジェクトが立ち上がったとき、私にこの資格があるというので思いがけずもその部署に配属された」といった類いの経験談を聞くことがありました。

本協会はこれからも社会調査がしっかりできて、個人情報をおろそかにしない有為な人材を世に送り出す努力を、全国の大学の先生たちと協力しながら続けてまいります。

そのためには、社会調査をめぐる環境の変化にも対応しなくてはなりません。とくに「データサイエンス」の到来は、20年前の協会発足当時にはまったく想定していませんでした。ビッグデータを用いた分析、機械学習の効用、ウェブ調査の是々非々といった問題が、専門家の間で議論されています。そうした議論を通して、これらのツールの適切な使い方を、これからの社会調査教育にも反映させていければと願っています。

最後に、本協会は資格の認定を中心に、他にも社会調査に関するさまざまな活動や情報発信を行っています。いずれもホームページで紹介していますので、ご覧になってご質問、ご意見等がありましたら、【お問い合わせ】のページからいつでもお寄せ下さい。お待ちしています。

2024年6月

谷 富夫(大阪市立大学名誉教授)