活躍する社会調査士
現役社会人として活躍する先輩からのメッセージです

志水裕美 (専門社会調査士)
2020年3月、関西学院大学社会学研究科社会学専攻 修了
株式会社インテージ勤務

※所属は『社会と調査』掲載時のものです。

調査データから生活者の実態を理解する

私は2020年4月に株式会社インテージに入社し、リサーチャーとして働いています。インテージはマーケティングに特化した調査会社であり、主に一般の生活者に対して調査を行い、お客様企業にはデータだけでなく、そこから得られた示唆の報告まで行っています。例えば、商品PRの印象が消費者にどのように伝わっているのかを調査し、お客様企業が伝えたい内容と実際に伝わっている内容に齟齬が生じていないか、生じていたとすれば何が原因でどう改善すればよいのか、報告書や報告会で提案します。ときには次に行うべきマーケティング戦略の提案を行うこともあります。お客様企業の成長に寄り添うことで、「調査屋」にとどまらず、共に走る「パートナー」であることを意識しているのですが、信頼されるパートナーになるには、いかに無駄のない調査設計を組み、有益な示唆を導き出すかがカギとなります。そして、調査設計から示唆を出すところまでを担うのがリサーチャーの役割となります。

このように書くと、リサーチャーがものすごく大きな存在であるように感じてしまうかもしれませんが、私自身はまだまだ至らない点が多く、毎日失敗と反省の繰り返しです。私のこの1年間は特にWebによるアンケート調査に携わることが多かったのですが、その中でも難しいと感じたのは、上がってきたデータから生活者の実態を読み取る作業です。何百、何千人分のデータが数値として上がってくるのですが、単純にグラフを作成してみるだけで生活者の実態が明らかになることは滅多にありません。ときには男性・女性に分けてみる、年齢で区切ってみる等、いろいろな角度から見なければ大抵は傾向が見えてこないものです。しかし、データの切り取り方は無限大にありますし、片っ端から見ていくには時間が足りません。

そんなとき、専門社会調査士の資格習得時に学んだことが大きな助けとなりました。調査前には仮説を立てて調査設計を行うこと、データの分析方法、調査のノウハウを身につけていたため、仮説にもとづいてデータを分析できたことが大きな時間短縮につながりました。また、データの切り口についてもある程度目星をつけることができました。私自身は心理学を専攻していたので、マーケティングにつながる示唆を出すことは難しかったのですが、調査の根本に関する部分は共通していたので、学生のときに学んだ調査のイロハが私の成長の助けになってくれたと思います。

専門社会調査士の資格を取得したからといって、すぐには調査のスペシャリストにはなれないと思います。それでも、専門社会調査士を取得したことで、調査のスペシャリストになるための大きな1歩を踏み出せたと考えています。働き始めてから見聞きしたことのない調査パターンをいくつも見てきました。そのような経験を積むことは何よりも重要だと考えています。これからも初心を忘れず、調査のスペシャリストを目指していきたいと思います。
(※『社会と調査』26号(2021年3月)より転載)

  • 2023年10月16日UP