社会調査教育の基本は、先行研究を読み取り社会学理論の学習を元にした反証型か異なる仮説を考え、検証のための調査手法を選択して現地調査を実施する、さらに得られたデータの分析をおこない、新たな理論化を図る手続きを学習させることにある。
当然ながらそれを担当する教員の理論的な蓄積や仮説の構想力そして分析力、最後に理論構築力が必要となるという意味で社会学者としての能力が問われる。これは同時に学生とともに一連のプロセスを常に自己トレーニングする機会をえることができるという教育・研究上の魅力につながっている。
現在、社会調査協会の資格取得プログラムにおいて、180大学200機関を超える社会調査教育担当教員が、多くの学生を引きつけ、体験型教育の実践に関わっている。その成果は実習報告書にまとめられ、社会調査履修学生の貴重な参考報告書として活用されている。
社会調査協会に提出される報告書は約700に及ぶ。これまで相当数の調査実習報告書を読む機会があり、これはという報告書のリストを作成すると、気がつけば過年度の優れた調査報告書として紹介されている同一教員の名前が目につく。
このことは、よい社会調査教育はすぐれた社会学研究者によって展開されているということを想起させるが、すぐれた学者がいい教育者であるとはいえないこともしばしば指摘されている。では、どのような関連性を考えていくことになるだろうか?
教育は、具体的なテーマを設定して、データの集め方、観察の仕方、分析の仕方をへてプレゼンテーション能力を育てることで社会的な役割規範を学生に内面化させることになる。
これをメソッドとしてどのくらい的確に学生を支援できるかという点が読ませる調査報告書となるといえる。