実務と研究の力を高める指針としての専門社会調査士
廣松ちあき

私が専門社会調査士の資格取得を意識したのは、大学院の質的調査法特論の授業がきかっけでした。担当された先生ご自身が専門社会調査士の資格を取得されており、「資格取得を通じた学習が自分の研究のブラッシュアップに役立つ」、「将来、大学・大学院で質的研究の指導をする際には、持っていた方がよい資格である」と力説されていたことを通じて興味を持ったのです。

私自身は、社会人学生として企業研修の企画設計に長年携わっており、これにともなう各種調査の運営も行っておりましたので、S1・S2セミナーの内容は、通り一遍は「理解している」と思っていました。しかしながら、日常的な実務場面では統計解析ソフトに任せてしまう統計量や回帰式の計算を自分の手で行うことを通じて、統計学や多変量解析の基礎について「理解していたつもりになっていた」自分に気づかされて、復習することの重要性を再認識しました。

また、質的調査の実際について、三井さよ先生がご自身の研究を題材としながら、質的調査と分析の勘所を平易な言葉で教えてくださいました。中でも「質的研究において、他の研究者からの疑問・批判に対して『現場に行けばわかります』という発言は、伝える努力の放棄でしかない。研究者の立場で、第三者に了解可能で一貫性(認識論、研究手法、分析・記述の方法の一貫性)のある説明をすることは研究者の義務である」という三井先生の言葉は、その後、私自身が取り組んでいる質的研究において心に銘じるものとなりました。

博士後期課程で研究を継続している現在も、量的調査・質的調査を問わずに、自分でデータを取り、分析して、結果を解釈するという機会を数多く経験することが、実務においても研究においても自分の実力を高めていく最も効果的な方法であると確信しています。そうした中で、「この結果をどう解釈すべきか」という場面において、たびたび基本に立ち戻って自分の理解を深め直す必要性に直面しますが、「何に立ち戻るべきか」という指針・羅針盤として専門社会調査士での学習が役に立っていると考えます。

廣松ちあき 早稲田大学大学院 人間科学研究科 博士後期課程
受講年度:2014年度S2科目講習会、2016年度S1科目講習会